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ベッドに差し込む朝日とともに起き上がったわたしに、「早く!散歩に行くよっ」と催促するはっちゃん(秋田MIX♂9歳)。
朝の行動でその日の散歩の充実度の予想がつく。
今日はゆっくりのんびり長い散歩になるはずだ。
よく晴れて暖かく、風もなく、野花が咲いて、小動物が活動した痕跡があり、これ以上ないぐらいの散歩日和だった。
4月は1年で最も散歩が充実する時期だとわたしは思っているが、今日はまさにそんな日だった。
はっちゃんはロングコースですべてのポイントをチェックしたあとに、シカ糞エリアに向かった。
すっかり保護色でハーネスがなかったらどこにいるかわからない。
だが動物たちにはわかるので、藪の中から聞こえていたガサガサ音がなくなった。
シカの痕跡はほとんどなかったが、付近をひととおり探索した。
それで帰るかと思いきや、海岸コースに行って道路の真ん中で寝そべる。
「暑くなったから、日陰で少し休んでいくよ」。
しばらく休んでエネルギーをチャージすると、隣町コースに向かった。
この時点で1時間半は経っていたし、はっちゃんも疲れていそうだったので、「そろそろ戻ろうか?」と聞いた。
すると「そうだね」とあっさり同意。
家のそばの道まで来ると、またしばらくゴロンゴロン休憩だ。
休憩をたっぷり取ってたくさん歩こう計画だったらしい。
気候がいいときはこういう散歩が多くなる。
わたしは基本的にはっちゃんの希望に従っているが、疲れすぎになりそうなときには帰ろうかと提案する。
すでに満足していてちょっと疲れてきた頃合いで提案するのがポイントで、そうすれば快く応じてもらえる。
ところで、犬がそばに来て体に前足をかけてくることがないだろうか?
小型犬に比較的多いが、人間が座っているときでも立っているときでも、後ろ足立ちして前足を人の体に乗せたりかけたりする。
この行動は以前は、犬が自分の方が人より上であることを主張する行動(優位性行動)と解釈されたりしていたが、現在では注目を求める行動、もしくは甘える行動という解釈が主流だ。
というのは、犬は自分のポジションをめぐって人間と争うことはない、というのが様々な研究によって明らかになったからである。
前足かけ行動は犬がボスになろうとする行動ではないので、驚いたり焦ったりすることはない。
他方で、犬が人の注意を引こうとしたり、それによって要求を伝えようとしたりすること自体をわがままな行動として否定したり、あるいは要求を聞いているとわがままになるからやめさせるべきだと言ったりする人もいる。
犬をわがままにしないためには、きちんとしつけをしないといけない、というのが定番だ。
ネット上や本などで見たことがある人も多いだろう。
だが犬の暮らしはすべて人間の支配下にあるので、人に要望を伝えなければ何も実現しないということを忘れてるのではないかといつも思う。
犬の声に耳を傾けてみれば、「ちょっと撫でて」、「不安だから一緒にいて」、「お膝で寝たい」、「おいしいものちょうだい」などと言っていることがわかるだろう。
こういうささやかな要求にすぐに気づいて叶えてあげれば、問題はそれで解決する。
しつけも「好ましい行動の強化」もいらない。
ただし食べ物に関しては、人の食事と犬の食事は別でおやつはフルーツを一緒に食べるというようなわかりやすいルールにすれば、犬も猫もすぐに理解してエンドレスおねだりを避けられる。
ちなみにうちでは、超小型犬のルルさん(ヨーキー♀2017年没)がよくわたしの脚に前足をかけてきており、保護当初はかなり頻繁だった。
他の犬たちはやらない。
ルルさんの要求はたいてい「お膝で寝たい」で、わたしがいすに座った状態から体をかがめて床に手を伸ばすと、自分でひょいっと手の上に乗ってくるようになった。
すると、わざわざ伸びあがって前足をかける必要がなくなる。
その結果、伸び上がりを省略するようになり、ルルさんが足元に来たことにわたしが気付かなかったときだけ(まずないが)、わたしの脚を軽く突っつくようになった。
要求を伝える合図を簡略化したのだ。
後ろ足立ちを伴った前足かけは、頻繁に繰り返していると腰椎や脚に負担をかける。
その点では頻繁にやらないようにした方がいい。
そのためには、この行動で犬が何を伝えようとしているのかを理解することがまずもって大切だ。
たいていは要求に関係しているので、そが満たされれば解決する。
先にあげたもの以外で見落とされがちなのは、「人間の口周りの匂いを嗅いであいさつしたい」だ。
大好きなご近所さんに飛びつくのはこのケースが多い。
そんなときには、人間が体をかがめてあげよう(中・大型犬で突進してくる場合は挨拶せずに犬に背中を向けてカーミングシグナルを出す)。
人間は動物の中では例外的に直立二足歩行なので、四足歩行の犬にとっては顔も胴体も高すぎる。
それで伸びあがってくることも多いということを頭に入れておこう。
抱っこの要求のときでも、人間が抱え上げること以外に、自分が床に座るという選択肢があることも忘れないようにしたい。
すべて人間目線で考えるとおかしな解釈になり、その結果犬を不安にしたり苦しめたりするので、常に犬の意思や考えに注意を払うようにしたい。
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